「ファウストを読んだ」蛇足
南「さて、今回の落ちならぬ蛇足っっっっっっ。まぁ、いろいろな本を読んで来た中で、ピンと来なかった
全知全能の神の姿を垣間見れたのは嬉しかった」
ツ「今回自体が蛇足だと思うが、まぁ、いいか。聞いてやろう、何故嬉しいのだ?」
南「俺は根っこは多神教徒なんだろうな。全知全能の神がただ一人だけってのがよくわからない。作品の中で
出られると余計に難しい」
ツ「現実世界の方が難しく無いか?」
南「いや、それは「ああ、こう言う考え方なんだな」で済む訳だ」
ツ「随分世界が狭いんだな」
南「わかるフリしたって無駄だろう?「全ては神の御心のままに」と言われても、何かあったら俺は反射的に、
別の神様に助けてもらえないだろうか?って検討を始めるぜ」
ツ「ひでぇな」
南「でも、全知全能の神様ならなんでも解決出来るじゃん、問題が起きる前にやっとけよってね」
ツ「事前に回避されたら話にならんぞ」
南「うん、だからギリシャ神話みたいに神自身がドタバタするんだと、気にならないんだよ。ただ全知全能の
神となると話は別だ。完全な神が何故悲劇を事前に回避出来ないんだ?」
ツ「そもそも、おまえは普段から、そこまで深く考えて物語を見ているのか?」
南「いや、娯楽重視の単純な悲劇でこそ感じるんだ」
ツ「娯楽重視の話は娯楽重視の話で楽しめよ、神とか関係ないだろ?そう言う劇では「ああ、こいつは敬虔な
人間なんだな、と考えておけば良いじゃないか、現実世界でそう思う様にな」
南「悲惨な現実を訴えるドラマを観る時はそう思えるんだよ。そこで俺が神をなじったところで、俺はのう
のうと観客席でポップコーンを喰いながら見てるんだぜ?責められるべきは何も出来ない俺だ」
ツ「厄介だなぁ。じゃ、娯楽重視の話だと何が違うんだ?」
南「あの世界には、神がいるじゃないか」
ツ「悪いが、それは違うな、目の前の悲喜劇にわかりやすい原因と、わかりやすい解決を求めたおまえ自身
が求めた神だ」
南「でも、その神は事前に何が起こるか知ってて、最後に狙い澄ました様に出て来て収拾を図るんだぜ?」
ツ「それをひっくるめて神なのさ。混乱しきった状況で、天井から降りて来る役者が機械で吊るされて降りて
くりゃ、観客にとっては大団円の合図になるだろ?」
南「いや、神は否定してないんだよ。その物語の中に神が居ると言うなら神はいるのさ、ただ、登場人物が
その神の意思をどう感じているのか知りたいと、常々そう思っていたんだ
ツ「で、ファウストか」
南「うん、答えが思わぬところから出て来た。これからは「全ては神の御心のままに」と言う登場人物の
気持ちがわかる、ってことだな。なるほどここまで全知全能な存在だと感じているなら、その意思を
人が問うたり出来ないわな」
ツ「登場人物もソレくらいの事は言うと思うがなぁ」
南「まぁ、それを感じられるか、と言う話だ」
ツ「ま、全ては貴様の気の持ち様だな」
南「そそ、ま、これで少しは幅広く、本が読めるかなーっと」
ツ「これだけの名作を持ってして得た教訓がそれか、嘆かわしい」