ID: PASSWORD:

とおめがね


日記鯖システム管理者からのお知らせ

  • HTTPSに対応し、http://ds.sen-nin-do.nethttps://ds.sen-nin-do.net のどちらでも日記鯖にアクセスできるようになりました。 なお、当面はHTTPとHTTPSのどちらも利用可能としますが、将来的には http://ds.sen-nin-do.net へのアクセスは https://ds.sen-nin-do.net へ転送する予定です。
  • 都合により日記鯖のURLが http://ds.wa-mo.to/ から http://ds.sen-nin-do.net/ に変更となりました。 突然で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。(2019/01/27)
  • 日記鯖の仕様変更、不具合対応等については、こちらの記事もご覧ください。

2008/08/05(火) 2人幅のエスカレーターは各段2人乗った時点で最低要求耐加重を超える


 読売報によれば、「事故時、逆走エスカレーターにはブレーキ限界を超える重み」
同社によると、事故を起こしたエスカレーターは重量が7・5トンを大幅に上回った場合、安全装置が働いてブレーキが作動し、徐々に減速しながら止まる仕組みで、9・36トンまで耐えられるよう設計されていた。
 9・36トンの重量は、各ステップに体重約60キロの大人2人が乗った状態。
 つまり、各段に大人2人が乗ったという時点で安全装置が働く重量になる。そういうことですか。もしかすると、駅のエスカレーターなどでは日本では常識とされている「2人幅のエスカレーターでは通常は片側に寄って立ち、もう片方は非常時など諸々のために空ける」という運用はそれなりに正しかったと。(その空いたレーンを歩いて登るなどの是非についてはさておく)
 ちなみに朝日などが言うところの「ステップ1段に3〜4人も乗る状態」についてだが、ASCII.jpの「WF2008[夏]開催も事故発生、次回冬開催は未定?」における現場検証時の写真を見ればそれが可能かどうかは判断がつくだろう。どんな曲芸だ。

●法的設計基準を調べてみた
建築基準法施行令の第百二十九条の十二の「エスカレーターの構造」における3
3  エスカレーターの踏段の積載荷重は、次の式によつて計算した数値以上としなければならない。
   P=2,600A
この式において、P及びAは、それぞれ次の数値を表すものとする。
P エスカレーターの積載荷重(単位 ニュートン)
A エスカレーターの踏段面の水平投影面積(単位 平方メートル)
 つまり1平方メートルあたりの積載加重は2600N=265.3kgf/m^2
 幅が2人用だとして幅1004mm(標準1200型として)、奥行き400mmと仮定すると、1ステップ面積は0.40m^2。よって、1ステップあたりの耐加重は106.12kgf。

 つまりが、建築基準法施行令でいうエスカレーターの積載荷重ギリギリの設計を行ったとすると、2人幅と一般的に思われているエスカレーターの1ステップあたりの積載荷重は最悪106kgfであり、エレベーターで考えている人間1人を65kgとする想定ですらクリアできないということ。
 エスカレーターの建築基準か、我々の運用想定というのを考えなければいけないな…。1段に2人乗れるスペースがあるなら全部の段に2人乗せても設計上はOKだと思っていたよ…。

●(追記)
 決定打が来た。NHKニュースの「過密な乗り合い 注意呼びかけ」
エスカレーターは、国の基準では、1平方メートル当たり最低でも260キロの重さに耐えられるよう設計することが定められています。すべてのステップに人が乗った場合、ステップ1つ当たりの重さの制限値は、多くのエスカレーターで100キロ前後となり、体重60キロの人が2人乗ると重量オーバーになる計算です。エスカレーターのすべてのステップに、大人の男性が2人乗ることは、初めから想定されていません。
 日本エレベータ協会のよくある質問によれば、
Q: エスカレーターに定員はないの?
A: 全てのステップに乗客を乗せた状態(満員)が定員です。
であるので、これらの整合性を取ると、
「2人用と世間で思われている幅(1004mm)のエスカレーターの定員は実は1ステップあたり1人である」
ということになるのではないか。錯覚って怖いね。

2008/08/07(木) 読売新聞はなぜ「1段に3人」にこだわるのか


 読売新聞より「エスカレーター逆走…1段に3人以上「想定外」」
事故機は、78段のステップで7・5トンの荷重に耐えられる設計で、ステップ2段に体重約65キロの大人3人が乗った状態だ。事故当時、仮に1段に3人が乗っていたとすれば、荷重は10トンを軽く上回る計算になる。
 ステップ2段に3人まで耐えられる→仮に1段に3人が乗っていたとすれば荷重オーバー、という展開に悪意のある誘導を感じる。
 先にも書いたように、2人幅に見えるエスカレーターですらステップ1段に2人ずつきっちり乗ると荷重オーバーなのだ。何も1段に3人乗るなどというおよそ無茶な曲芸状態を仮定しなくてもよい。
 「1段に3人乗ると重量オーバー」という非現実的な例えしか言わないことで、窮屈だがまだ常識的な範囲と世間では思われるであろう「2人幅のエスカレーターに1段に2人ずつ乗ること」の危険性が読者には伝わらないので役に立つ報道ではなくなっているのだ。
 常識的な範囲では、余裕で乗れるフットプリントさえあれば標準的な大人がそこを埋めても設計上の重量オーバーにはなるまいという思い込みがある。それが本当に単なる思い込みでしかないという事が今回の事件のキモであるというのに…。
 今後の事故防止という意味では、今回本当に1段に3人乗っていたのかどうかなどという事は問題ではないのだ。