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前回の補足エントリーだかで、
なぜAppStoreが最適解なのか?(iPhone 3G Wiki blog)なる文章が出ている。
まず搾取だの何だのの単語を使う事をおやめなさい。
あるものを搾取というならば、どこからが搾取でどこからが正当な取引であるのかが問題となるとは考えられないのだろうか。自分が気に入らないのは搾取で、自分が気に入っている(疑問を抱かないことを自覚できないのを含む)ものは正当な取引であるなどいうのは単なる感情論やレッテル付けでしかなく、それを読み取る能力があるものからすれば、その文章の背後にある意図が透けて見えて興ざめなので。
>一社独占モデルへの批判
比較対象を場合に応じて都合よく変えるのをおやめなさい。
Apple社の経営方針と日本企業の経営方針…? ジョブスと日本の大企業の構造の差…?MOAPとKCPとiPhone OSの差…?
それぞれに狙っているものが違い過ぎて比較になっていません。ああ、単にAppleが素晴らしいですねという話をしたいがためにコンセプトが全く違う相手に敢えてぶつけていますというのなら別ですが。
前2者についてはともかく、MOAPとKCPって「日本の特定キャリア向け開発プラットフォームの共通化」でしかなく、iPhone OSとは全く異なる狙いのものですが。あと、iPhone OSって頼めばApple以外のメーカーのハードウェアに搭載して走らせることのできる類のものなんでしょうか。
それで、そこまで意味の無い比較を続けておいて最後には「だからAppleが素晴らしいというわけではなく、結局はガラパゴス化しないことが重要なのであり」ですか。じゃあ、この項要らないですよね。私の評価点は世界でそれなりに共通して使える製品であると言ってしまえばいいだけの話で。
>オープンではないことへの批判
完全オープンではない理由なんか簡単じゃないですか。「ある程度セキュアな環境を作るには制限を加えて管理するのが手っ取り早いから。」
ガラパゴスケータイとやらでのソフト実行環境がそんなにオープンな環境に見えましたか。 ネイティブアプリケーションへの受け渡し制限、許可レベルによる使用APIの制限、ハードウェア内部リソースへのアクセス制限。そういった、レベルによるアクセスコントロールをハナから実装していたのがJAVAやBREWベースのこれまでの携帯電話です。
安全なレベルで動かしている分には誰の許可もなく勝手に作って構わない(それが破られないという堅牢性はプラットフォームが保証する)が、あるレベルを超えた権限を使ってリソースへとアクセスするにはキャリアなりなんなりの許可が必要であるという仕組みは携帯なりスマートフォンであれば普通の話です。
それから、UIの統一性の重要さ加減の認識なんていうのは、Appleが伝統的に68kMacの最初の頃からやっていた事でありましたが、それはOSやアプリケーションインタフェースの話であって、どこのものとも知らないInternet上のWebサイトのデザインの話には適用できないし、Appleもする気もないと思いますが。AppleはiPhone用のWebサイトを作らせることにそんなにご執心でしたかね。
>ビジネスモデルとエコシステム
「もしiモードが健全なエコシステムであったならば、携帯電話機メーカーが相次いで撤退(または事業譲渡)することもなかったでしょう」
文章の論旨がつながっていません。一キャリアのネットワークサービスと、各携帯電話機メーカーの間に何の関係があるのかと。
「もし日本の従来型携帯電話におけるネットワークサービスが、ハードウェアメーカーの収益までを右肩上がりで約束すべくそれを見越した展開を見せうるものであったなら、携帯電話機メーカーが飽和した市場で事業を縮小することもなかったでしょう。」とは言えますが、はっきり言ってそれは無理な話です。前の文章で右肩上がりの幻想と言っていたのは一体何だったのでしょう。
更に言えば携帯普及率が飽和状態になってきている状況において、ハードウェアを買い換え無くても中身のソフトウェア書き換えによって最新サービスに対応できる様になった場合でも、携帯電話機メーカーの業績は「これまでの様には」上がりません。ソフトウェア販売だけの利益が、ハードウェア込みで売った時の利益を上回るものとも思えませんし。
成熟しきった市場であるところの日本の従来型携帯電話市場におけるハードウェアメーカーの話を、まだ出てから2年程度の市場の伸び率と比較すれば、そりゃ後者は魅力的に見えるでしょう。
それにしても、この一言は酷い。
「利用者が一方的に搾取されることもなく、デベロッパーに広いチャンスが与えられ、メーカーも長期的な視野において製品開発に取り組むことができ、新機能を含む大規模なフィードバックを数年前の機種でさえ受けられるという好循環な環境を、どうして今までの仕組みでは実現できなかったのでしょうか?」
答え:OSメーカーと携帯ハードウェアメーカーがまったく同一のものであればそりゃできるさ。
だから「利用者が一方的に搾取され」というのが意味不明だが(正当な対価は払うべきだし、使いたくないならば使うな)、ディベロッパーに広いチャンスが与えられていたのはこれまでの携帯アプリケーションでも同じ事、携帯電話ハードウェアメーカーとそのOSメーカーが同一のものであれば、製品開発に長期的な視野を自社内で共有するのは自分で勝手にできる話であれからそうすりゃいいだけの話であり、新機能を含む大規模なフィードバックをかけるのも自分のところの製品に自分が企画したものを乗っけるだけであるのだから最初からそのコンセプトで作っていればそれで済んでしまう話。
ちなみにそれなりにコンセプトが安定したプラットフォームが存在すると言うことは、iPhone上のアプリケーションを書くソフトウェアベンダーにとってはなかなか有り難いことではありますが、通信キャリアにとってはどうでもいいこと。
特に海外の様に端末メーカーと通信キャリアの結合が緩いところではなおさらですが、自社の(有料)ネットワークサービスを使わないiPhone(および他のスマートフォン)ユーザーの存在は、ただ定額で料金を払ってくれる一ユーザーでしかありませんし、キャリアも土管に徹するという話ですから。それはキャリアもAppleも納得ずくの話です。
それにしてもi-mode,EZweb,Y!ケータイの累計契約者数が約9155万契約。世界でのiPhoneとiPod Touchの累計販売台数が約3700万。世界から10%のシェアを集めるのと、既存の仕組みで同じシェアを取るのではどっちが簡単だと思うだろうか。
無論、将来的にこの数が逆転することもあり得るわけであるが、そのとき全世界のデベロッパーから審査を受けるAppleの部門ってちゃんと対応できるのだろうか。
国内のキャリアでもそういうところが非常に煩雑で(ユーザーに対しての安全を保証しなければならないから)、Andoroidマーケットはそのあたりを緩くしてgoogle自体にかかるリソースを軽減するように考えているのではないかという後発の知恵。あと、googleは各種ネットワークサービスとOSの提供者であって、ハードウェアメーカーは別に居るということを考えるとコンセプトから異なるのでアプローチも異なろうという話になりましょう。
まあそれにしても、たかが発売から2年のiPhoneの実績程度で未来を夢想して賛美することと、まだ現実に登場してすら居ない各キャリア別のAndroidマーケットの中身を邪推して批判することの酷さときたら。
拙い文章というものは、その内容を糊塗するために全く関係のない比喩を持ってくるという「知の欺瞞」に出てきそうな文章でございました。
「iPhone大好き。AppStoreは利用者にとってみればアプリを取ってくるところが1カ所にまとまってて便利だよ。」程度の話にしとけばよかったのに。
ああ、私のiPhone評ですか?
元々PCからインターネットに触れた自分としては、携帯電話のユーザーインタフェースなんざクソ。i-mode他の携帯Webなんざどうしようもなくクソ。あのテンキーで文章を入力するなんざまともな人間が耐えられるものではないという前提において。
メールは携帯端末として十分及第点。Safariも携帯のフルブラウザなんかに比べるべくもなく合格点。カレンダーもGoogleカレンダーと同期してプライベート的には問題なし。最高に便利なのはマップだろうか。ただ、iPhone内のメモをWindowsマシンのテキストファイルと簡単に同期できる仕組みがあれば申し分なし。
電池を気にするとiPhoneに音楽やビデオ再生をさせるのは後が怖いから、iPhoneとiPod nanoの2本使いなんだけど、なぜかiPhoneはビデオプレイリストというのが存在しないのが不思議ではあった。
まあ、iPhoneだって私がまともに使えると判断するまでに2年。Androidも2年後ぐらいは様子見が必要なのではないかと。
以上。