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とおめがね


日記鯖システム管理者からのお知らせ

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2009/08/12(水) 池田信夫氏の通信関連の主張が信用ならない理由

・理由1 「2009年になっても、未だに日本でPDCを採用したのは失敗だったと主張する」 (2009年8月11日 「日本企業はなぜ敗れたのか」)
 1990年に「GSMを採用すべきだ」と主張するのは別に問題ないが、2009年になってもGSMを採用すべきだったと主張し続けるのは、2000年近辺の日本の大都市圏におけるPDC無線区間収容限界問題と何故日本だけ3Gの導入、移行が早かったのかという結果を認識していないいことを露呈する行為である。
 2000年近辺においては、GSMよりも周波数利用効率が高いはずのPDC(しかもそのハーフレート)ですら大都市圏において利用周波数割り当てが逼迫しており、エリア分割を細かくしていくなどの対応を行っても移動機の収容溢れが生じていた。(新宿などのエリアで「混み合っている」状態が夕方などに常態化していたのである)
 これらの状況から、新帯域への移行および周波数帯のさらなる効率的な利用というのが日本の携帯電話においては急務となり、各キャリアはcdmaOne,CDMA2000,W-CDMAという2.5G〜3Gへの移行をしなければならなかったというのが実情。(そう、IDOやauはあの周波数危機を乗り越える現実的な術を持っていたのだ!)
 海外ではそのような状況が深刻ではなかったので、GSM(EDGE)を使い続けていても別に問題無かったし、3Gへ移行しなければならないということも無かったというわけ。
 当然、1990年時点で2000年近辺のような爆発的な携帯電話加入率の増加が見込まれていた訳ではなかった(1996年時点では携帯電話会社は加入率が人口比20〜30%程度で頭打ちになると考えていた)ので、当時そこまで考えて電力制御や周波数利用効率の(多少の)高さを持つPDCを採用したのかは疑わしいが、結果としてPDCを採用していなかったら2000年近辺の「危機」を乗り越えられず3Gがモノになるまで耐えられなかったことは明らかであろう。
 よって、1990年に「世界標準のGSMを採用すべき」というのはそれなりに正しいし、現在の状況から振り返っても「2000年を乗り切れなかっただろうから結果的に間違い。あのときの主張を取り消して謝罪しろ」とは言わない。
 だが、2009年になってもまだ「PDCを採用したのは間違いであった」というのは、「じゃあ後付けでもいいから2000年近辺の危機を乗り切る方法を詳細に説明して見せろ。ただし3Gがまともに使えるようになる年を前倒しするのは反則な」と言わねばならぬほどの愚かな主張に聞こえる。

 それから、「ISDNの普及にこだわってTCP/IPを拒否し続けたことだった。」って一体なんのことだ。

・理由2 「アマチュア無線は必要ないと主張する」 (2006年12月5日 「アマチュア無線って必要なのか」)
 はっきり言う。国や企業が管理するインフラに乗っからないと(無線)通信手段がないということがどれほど危険な事か池田氏は理解していないだろう。
 「インターネットで必要無くなったのはアマ無線のほうである」などと彼は言うが、インフラ屋から言わせてもらえば「それはインターネットを支える通信インフラが正常に動いている場合の話ですよね?」と言いたくなる。
 つまりが、電話であれインターネットであれテレビであれラジオであれ、その機能が正常に働くのはそれらインフラが全て正常に稼働しているときに限られるという事なのだ。
 では、それらの通信インフラが故障や災害などで壊滅したらどうする? そこまでいかなくても、それらの通信インフラがないところ(つまりが全ての商用公的通信サービスエリア外になる地点)から民間人が(無線)通信を行おうとした場合に全く合法的手段がないというのはどういう問題があると思う?

 通信インフラはどんなときでも正常に動いていて当然、という危機意識の無い人間が通信インフラ政策を語る資格は無い。

・理由3 「未だに周波数オークションを推奨する」 (2009年8月5日 「周波数オークションこそ「成長戦略」だ」)
 欧米の3Gのサービスインが大幅に遅れた理由にこの周波数オークションによるイニシャルコストの増大、そしてその後のITバブル崩壊による通信会社の破綻があった事(そしてドコモが海外で2兆円を失ったこと)を無視し、未だにその防止策も考えずに周波数オークションなるものを導入することにご執心というのが、ユーザーへの迅速なサービス提供を無視した理論にしか思えない。
 しかも、免許を転売する第2市場を作れば良いだの。そんなことをしたら、地上げ屋のごとく周波数取得費用を高騰させたあげく塩漬けにして最終的には破綻させ、その間他の通信キャリアの参入を遅らせるという戦略が可能になるではないか(ダミー会社とかでやってしまえば完璧だ)。または、周波数転売で稼ぐ転売屋を蔓延らせるだけのこと。
 少なくとも、現総務省の戦略では、新たな通信サービスのために周波数帯の免許を与える場合には、その「新たな通信サービス」が遅滞なくユーザーに提供されることというのを優先しているのであるから「免許を与えるからにはちゃんと提出した期限までにサービスを開始せよ」という約束をさせられるのである。(だから、事業計画とかいろいろ審議されるわけでしょ)
 一企業による周波数帯の占有という問題においては既に対策が出ていて、最近の周波数割り当ての条件にはMVNOに他社にインフラを解放することが入っている。その効果は3Gや2.5GHz帯割り当てで取得したUQのMVNO受け入れ戦略に出ている。

 テレビ用電波に限って話をするにしても、結果的に地上波民放が丸潰れになったり、NHKとCSとかの有料放送しか残らなくなったらどうするの? 私はそれでも構わないけど(笑)。


 以上3点の主張により、少なくとも池田信夫氏の通信政策関連についての話は非常に眉唾であると考える。頼むから過去の実例を検証して学ぶ姿勢っていうを持ってくれませんか。あと、今時の情報通信に詳しい人からちゃんと教えてもらえばどうですか? 西さんのツテでも大学のツテでもいろいろあるでしょうよ。政府の役人は馬鹿っていう先入観があるから反証に耐えられないツッコミ所満載の文章ができあがるんだっての。
 
 それにしても、こういう人がいるから経済学者って眉唾ものに見えるんだよ。「学会では常識」とか言う割にそれを実証することはなく、過去の失敗例もロクに分析せずに机上の空論を振り回す程度のね。


(2009年8月21日追記)
slashdotでネタとしてあがったので追記。欧米で3G導入が遅れたのは周波数オークションが結果的に重荷になったこと以外にも複合的な要因があるので、以下に整理しておくことにする。

1)周波数オークションでのイニシャルコスト増大の問題
 結果的にその後のITバブルで資産を失ったので、より負担が大きくなりサービスインまでにインフラを整備するための体力が持たなかった。
2)キャリアが3Gに移行する必然性がなかった
 諸外国では当時携帯電話普及率が日本ほどではなかったのと、大都市圏における周波数逼迫問題に直面しなかったか、あっても対処しなかったので、3Gを導入して加入者を新たな電波帯に逃がしたり周波数利用効率を向上させる必要性がなかった。通信速度もEDGEという手段で逃げられたので3Gに積極的に移行する必然性や利益がなかった。
3)ユーザーにとってまともな3G(+2G)端末が出てくるまでに時間がかかった
 3Gで先行していた日本ですら、まともな端末(仮にドコモにおける900i以降としようか)が出てくるのは2003年冬まで待たねばならなかった。なお、FOMAの正式サービスが始まったのは2001年10月1日(試験サービスとしては同年4月から)。
 W-CDMAの通信部分のチップセットがシュリンクされるまでそこまでかかったわけであるから、それまでGSM圏で使われていたようなコンパクトな端末に慣れたユーザーに訴求できるわけもなかった。また、国際ローミング使用等も考えるならば、W-CDMA+GSM両対応機種にするのはユーザー要求としては当然であり、ドコモの端末で考えるなら2004年冬のN900iGまで待たねばならなかった。ただこれも当時の900iシリーズに比して大きく、待ち受け時間も短いという代物であったため、現実解としてこれまでのGSMユーザーにも受け入れられる大きさになるには905iシリーズが出る2007年冬シーズンあたりまでかかったであろうことは想像に難くない。
(注:日本の携帯電話は諸外国のものに比べて機能が多い分、開発も困難になるために諸外国より投入が遅れてたという可能性もあるが、通信方式への対応は結局のところベースバンドチップが握るものであるから、これまでのGSM端末と同じぐらいの大きさで使い勝手のGSM+W-CDMA端末が外国で出てくるのも2007年冬シーズンぐらいであろうと書いた。この頃にGSM+W-CDMAデュアルバンドがワンチップで処理できるLSIが出てきている)


 なお、これらの政策に関しては政権というか政党というよりも、総務省の担当部署が(結果的に)上手くやっているのだと私は評価している。
 青少年へのフィルタリング問題とかへの取り組みは結構アレだが、こういった電波資源の利用問題という古典的な項目についてはそれなりに上手くやっていると思うのだ。特に、長期的に利用計画や移行計画を建ててそれを地道に実行するのは上手いよね。

2009/08/14(金) 夏コミ新刊できました


 しすこ屋C76夏コミ新刊は「社内SNSに潜むリスクの本」となりました。B5版20ページです。二日目土曜日(15日)東2ホール、 P-55b「しすこ屋」にてお待ちしております。
 なお、今回のしすこ屋として頒布物は新刊だけですが、委託でFortigateに関するドキュメントCD-ROM(内容はPDFファイル)がある予定(できるか未定だそうで)です。詳細は後ほど。(落ちたそうです)
 今回B5版になっているのは特に意味はなくて、単にkinko'sがキャンペーンで安くコピー本を製本してくれるからなのでした。