Macross ZEROを観る。
…あー、マクロスF内で上映されたバージョンを頼む…をぃ。
俺的萌え要素満開の作品なんだが、全般的になんだかな、と言う出来。
めずらしく、ネタバレにて感想を書くので改行。
マクロスの柱は「男女三角関係」「可変メカ」に加えて「謎の敵との戦い」だと思う。
さて、この柱のうちの一つ、「謎の敵との戦い」だが、俺はこの手の伝記物が大好きな
ので、素直に楽しめた。
古くさい「翼を持つ人=ロボット」と言う設定だが、マクロスシリーズでやるとなると
全てがハマる。
OVA5話でロボットを印象づけるのは難しいはずだが、ここは何しろバルキリーである。
飛行機が変形してロボットになるので「鳥の人」と言う印象にも無理が無い。
もう一つ、この手の物語でありがちな終末戦争だが、マクロス世界の中で統合戦争は
「ゼントランディとの戦いの前に人類が一つになるかどうかの瀬戸際」だった訳だから、
終末戦争と呼ぶに相応しい。
もし、マクロスと言うベース無しにこの物語を作ったとしたら、これらの設定を延々と
仄めかされたり説明された挙げ句に「宇宙から来た異文明の遺産」と言う落ちを聞かさ
れる訳だ。おそらく壮絶に退屈だったと思う。
さらに、もう秘密がネタバレをしているので、無駄に価値をつける必要がない。伝記物
は延々と「秘密を守る者と侵す者の戦い」をやる訳だが、ヒロインを除いてこれがない。
島民にしてみれば、村のルールが神話をベースになっているので、破らない程度の理由
であり、目の前の幸せの方が大事だと思う。おかげで近代軍隊を前にして、無駄な戦い
をするシーンも不要になっている。
と、言う訳で「謎の敵との戦い」はそれなりに条件を満たしていると思うが、残りの
二つが弱かった。無駄なシーンで時間をつかって説明不足と言う訳ではないので、尺
の都合だとは思うが、それでも不完全燃焼は否めない。
「男女三角関係」は言われて見ると三角関係だなーと思うが、ヒロインが抱えている
ものが大き過ぎて、正直三角関係どころでは無い。
「可変メカ」はVF-0の見応えはあったし、表現は良いなと思うが、いかんせん好敵手
に恵まれなかった。キーとなっている人間同士の愚かな戦争と言う部分に重みが無い
んだよな。シンにしてもノーラにしても、過去に戦争で悲惨な目にあっているのだが、
どうもピンと来ない。
話の全部に重みが無いのかと言えば違う。鳥の人の争奪戦、そのせいで文明に犯され
て行く楽園と言う部分は短い時間で効果的に描かれていると思う。
島民がジュース欲しさに掟を破って血液採取をさせてしまうエピソードは秀逸だと思う。
あれだけで、掟が廃れつつある事、島民が文明に憧れている事、採取の目的を偽って
真の目的は別にあること…など、いろいろな事を象徴的に語っている。
何故か戦争にだけが重みがない。でも登場人物は戦争に巻き込まれており、彼の人物
像は戦争抜きには語れない。
ここら辺が登場人物が、戦闘シーンが軽い理由じゃないかと思う。
ま、マクロスFだと、この戦争の軽さが「陰謀の元を倒したんだからもう戦争はおし
まい!」と言う大団円を生み、良い方向に行ったんだし。元々がバルキリーが活躍する
ことが目的のOVAで戦争の重さを描かれても困ると言えば困るのであるが…なんとなく
不完全燃焼なOVAであった。