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鳥獣保護法がそろそろ改正されるそうである。その間に鳥獣保護に関して色々な問題が生じてきているが、その中のカワウにちょいと注目。90年頃から急激に増え始め、同時にあっちこっちで漁業被害を及ぼしている。現在の個体数はわからないが、滋賀県だけで4万羽はいるらしい。もちろん、移動力の高い鳥ゆえに、飯を食いに他県から来ている時にカウントされたなんて可能性は小さくはないのだが。東京で営巣していたコアジサシが飯を食いに北海道まで行ったなんて記録もあるくらいなのだから十分あり得る話で。
・で、滋賀県では漁業被害はもちろんのこと、文化財にもなっている建物もある竹生島に営巣してるもんで、島の木が7割近く糞で枯れてしまったという。しかも残り3割だが山道沿いの人間の通り道の近くでカワウが営巣できない(警戒心が強いらしい)所が残っているだけとのこと。漁業関係者だけの問題ではなくなっていて、政治家もなんとかせぇ(≒カワウを殺せ)と息巻いているそうな。ありがちありがち。
・ところがさっそく猟銃を使って駆除してみたが、個体数には全く影響なし。県内推定生息数の8割を駆除した年も個体数には影響なし。他の駆除をほとんどやっていない東京等と変動がほとんど変わっていないという結果に。要するに、駆除をしても繁殖でそれがあっちう間に補われるか他地域から補充されるかということか。
・これを受けて鳥獣保護法では、今まで県単位だった特定鳥獣保護管理計画をより広域にわたって定められるように改正する、とのことらしい。どっちにせよ移動力の強い鳥ですから、ある程度まとまった地域が連携しないとなんともならないということか。
・しかしながら一方でカワウは戦後の農薬による生物濃縮や営巣地となる水辺林の消滅により、70年頃には全国で3000羽くらいにまで数を減らした経験もある。数が増えたとは言ってもこれらの数を減らした原因が除去されたわけでもないので、数がまた減る可能性はなきにしもあらず。この辺が恐らくは環境省の頭の痛い所に違いない。
・単純に数を減らしたければ広範囲に同時爆撃をやらないといけないということになる。一方でこれらの措置の結果絶滅危惧種の仲間入りになったら環境省としては存在意義を疑われる。絶滅は論外。関東圏でもカワウ対策をまとまってやりましょうという話はあったらしいが、都県により熱意に差があるそうな。狩猟による駆除自体かなりお値段が高く、費用対効果が得られないんじゃないかと(しかも、定期的に行なう必要アリ)。ヨーロッパでも駆除による個体調整をやったが、成功例は一つもないとの報告。結局は「敵」を知った上で対策を考えるしかないということか。個体数が減る前のデータがないらしく、その時はどうなっていたのか、カワウを食べる捕食者、餌資源や営巣地をめぐる競合者はいたのか等など。
・この中、滋賀県がオモロなことをやってくれた。先ほどの竹生島のカワウを駆除するため、
石鹸水をかけるということをやり始めたらしい。しかもこれ、ラジコンヘリによる空中散布。実際どこまでやったのかは知らないが、「
竹生島の景観をカワウから守るためにカワウの個体数を減らす」という目的と手段から目的がきれいさっぱり抜けてしまっている典型的な行政のパターン。石鹸水で守るべき景観そのものがアレになるんじゃないかとすぐに思ったが、その他石鹸水散布による卵の孵化率低下は認められるが、それで個体数が調整できるのかということだ。石鹸液を原液で撒いて致死率8割近くというが、これは個体数調整に役立つのか誰か検証したのだろうか。つか、複合的な作戦によってどれだけ減るのかは知らないけど、孵化率下げたってカワウがあの島から出ていくわけじゃないんだし。提案者もこれに許可を出した人も素薔薇しいよ。一回行きたいな、竹生島。