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えらい物騒なタイトルだな。
・仕事、というよりも仕事外なのだが、現在「里親」の仕事に関わっている。ちまた一般で使われているような人間の子供を引き取るアレでもなければ、犬や猫などのペットを引き取るアレでもない、対象は植物の苗である。要するに自然保護の一環として、普通の自然状態ではまず発芽しないし発芽しても大きくなる前に枯れるか食べられてしまうのがほとんどであろうと思われる木の苗を種から育ててもらい、大きくなったらもとの場所に植え戻してもらおうという企画である。
・なんでこんなまだるっこしいことをするか、店で苗か木を買えばいいやんかと思うであろうが、園芸屋さんにご当地の苗があるとは限らない。目的の樹種とは違う苗では論外だが、同じ種の苗でも生育した所が違うと広義の意味での『外来種』になってしまう。それに、高いし(笑)。
・そんなもんで木から種をとってきて苗から育て、大きくなったら植え戻す「里親」制度をやろうと、そういうわけだった。ところがここで上司からチャチャが入る。「里親」という言葉を人間以外に使うのはまずいんでないのかい、と。
・えっと思い慌ててインターネットで検索。…うーむ、苦言を呈しているのは主に「人間の子供」を対象とする「ホンモノ」の里親に関わっている方々から。引き取り、引き取られる「里子」が動物やモノと同じ扱いを受けて非常に迷惑していると。のひー。
・自分は現在第二者と第三者の間を行ったり来たりしている所なのだが、これには頭をかかえた。無論自分は差別主義者ではない。非意図的に差別はしているだろうが意図的にはしていないつもりだ。同じ「辞典」でも「英語辞典」と「国語辞典」は別物じゃないのよ。…とも思うが、いかんせん本来の「里親」の認知度が極めて低く、犬猫の「里親」の認知度に圧倒されている、というのがかなり主だった原因なのではないかと。もちろん突き詰めれば卵が先かニワトリが先かのうどん粉プップの助理論(魔夜峰夫の方ね)になるのだろうがな。
・ほぼ全ての差別の根っこにあるのは先入観と無知と偏見であるのだろうが、「里親」差別も恐らくはこれなのだろう。児童福祉法でも「里親」の定義づけはなされているので、他の生物・無生物でこの言葉を使うのは控えた方がよさそう、である。どこぞの環境省下の社団法人でも、犬猫などの愛玩動物には「里親」という言葉は使わないようにしよう、とのこと。だから、今まで作った資料から必死こいて「里親」狩りをおこなっているのだ。ちょっとだけ辛い。だが、自分が扱っているのは教育にも関連するだけに、ちょっとデリケートになってしまう。なので「里親」狩りにいそしむのであった。
・私の知り合いには差別に造詣が深かったり差別を憎んだりしている者が多いのだが、こんな形で言葉狩りに出っくわすとは思わなかった。つくづく言葉は難しい。
・さて、ここで「里親」という言葉を人間以外に使うなと主張する方々に声の届かぬ質問である。自分は「植え戻し」までが企画に入っている以上使えないが、犬猫の引取りについて「里親」ではなく「養子」としたらどうするか? これはオーケーか? オーケーなら、是非ともその理由を問いたい。それとも、この言葉も「刈り取る」か? もし「養子」狩りも行われたらそりゃ大変だな、「養子」が駄目な以上「アドプト」も駄目になるし、そーなると全国のアドプトプログラムとか全部名称変更しなきゃいけない。行政レベルで「里親」「養子」という言葉を人間以外に使っている所はかなり多いのだが、さてさてどうなることか、厚生労働省や環境省の力を借りて言葉狩りをするのか。