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確か「タイトル」を推進する法律というものが議員立法で去年できていたような気がする。議員立法というのは「カネがついてこない」と同意義だとは誰かさんが言っていた気がするがどうなのか。
・ それはともかく農協で有機農業の現況とか課題について語る会があったので聞いてきた。省職員→実際にやっている農家→販売流通(だけで括ってはまずいと思うが)という立場から順番に公演があったが、省職員はともかく現場の話はやはり世知辛いというのはお約束か。特に現状、契約栽培しか道がないというお言葉は、それが限界なのかとちょっとため息。てか、農家の方も販売の方もJAS規格なんてイラネという論調だったのがワロスというかカオス。
・ 自分は昼日中からこういう勉強会に行ける給料取りであり、専ら消費型の人間であるが、スーパーで「JAS」のマークがついていたって別に選ぼうとは思わない。間違いなく安い方を選ぶ。うさんくさいとか信用ならないとかいう問題もあるが、それ以上に「(化学合成)農薬を使っていない」「化学肥料を使っていない」というものに高い値段を払えるかと言われるとノーと答える。自分は味覚に全く自信がないし、農薬や化学肥料を使っていないから健康に害がないとは限らないし(逆もまた然り)。一週間の3×7=21食のうち3分の1以上をコンビニや外食に頼っているような人間でもあるわけで、さすがに野菜は多めに、調味料は少なめに、運動しない日はカロリーは控えめにというのは心がけているつもりだが、有機だの慣行栽培だのには興味ないと言ってしまえばもうその通り。
・ で、有機農業の発揮するもう一つの機能である「環境保全」についても、現況有機農業に取り組んでいる農業は置いておいて、JAS規格の通った農産物を作っていれば環境保全ができるのかと。もちろんノーなわけで。有機肥料だって過剰投入すれば窒素過多を起こして農作物や地下水を汚染するし、そもそも農業は有機だろうが無機だろうが自然環境を開発して自然資源をちょうだいする産業なわけだから。ただ、自然資源を修復不可能にしない程度での農業というのはできるし、それこそ今流行りの「持続可能な農業」は存在しうる。ただ、JAS規格が通った農産物を作っても持続可能な農業とは限らないし、有機農業に取り組んでも持続可能な農業とは限らない。そして昨年末や今年の夏に発表された環境省レッドリストを見る限りは、じぇんじぇん守られていないよーだし。
・ 話は少々さかのぼって1999年だったか、食料・農業・農村基本法なるものができた。これは戦後からここまで農業といえば食料生産唯一無二だった政策をちょいと替えて、農業は水をためたり環境を守ったりする多面的機能があるんだと言い始めた。国内の農業がどうあがいてもヤバい、特に地方は農家が多いから農業畑の政治化がなんとかすれと圧力をかける。だから農業を国内で存続させる理由としてこういうコジツケをつけたした経緯がある。ただ、ここの問題は、多面的機能は従来通りの慣行農業をやったって発揮されないということを全然理解していない、あるいは知ってても言わない方々が農家にも農水省役人にも、当然消費者にもいるということである。この前出た農水省生物多様性戦略についても、どっちともとれる書きぶりをしていた。
・ で、何が言いたいかなんてことはなくてただの覚書に過ぎないのだが、近い将来日本の農産物と海外の農産物が同じ土俵に立つ時期が来るのは間違いない。その時に消費者は海外の有機農作物と国産の有機農作物のどちらを選ぶのかと考える。面積スナワチ値段で負けている分、まず中国や欧州、南米、アメリカに負けるんだろうな。それも有機も慣行(←従来通りの農薬や化学肥料を使った)栽培も関係なくおしなべて負ける。
・ ただ、前述の「多面的機能」については、さすがにメリケンやヨーロッパで発揮されても日本に住んでいれば恩恵はあまり多くない。特に遺伝資源については地域固有なわけだから、遺伝資源保全機能を発揮できる農業があるのなら、金を払う価値はあるのかもしれない。
・ 一ヲタの独り言ではあるが、農業政策として、こうしてはもらえないだろうか。日本で出回っている農作物の品質の格付けを、もう少し下げてもらえないかな。腹を壊すのはそりゃいやだけど、イモムシの虫食いキャベツだとかカメムシの吸汁米だとかが少々あってもええんやないかと。アドンやサムソンのごとくテカテカツヤツヤな農作物じゃなくてもいいんじゃないかいとな。そうすれば「慣行」栽培でも農薬は減らせるし、色映えを良くするために多く投入していた肥料の量も減らせるんじゃないかと。有機農業を推進する法律がいくらできても、日本の市場に出回るのは大半が慣行栽培の作物では、有機を作っている農家が萎縮しやしないかしら。「安全・安心」だけに価値を求めていては、欧米の作物に値段で勝負にならない。というか、地球温暖化抑制という点では、日本の慣行栽培でとれた作物よりもメリケンで作った作物を輸入した方が寄与度が高いという話まで出ているそうじゃないか(←未確認情報)。もう少し環境保全について考えてくれないと、農業自体が終わるんじゃないのかしら。まぁ、終わったら終わったで農地が自然に戻る所は戻るんだろうけどな、今だとゴミ捨て場かダムの底になるのが関の山か。