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これだけだと何がなんだかという印象をここに来られた方どころか数日後の私まで受けるであろうから(ひでぇ)、とりあえずメモろう。
・ まず、重要品目というコトバの前に「タリフライン」というコトバについて説明。詳しいことは
ここがわかりやすいので載せておこう。リンク先にもある通り、「コメ」といっても17ほどあったり、豚肉については32あったりする。日本の場合はいくつだっけな、無税の品目も含めれば1332品目だった筈だ。
・ そんでもってよく新聞で言われている「重要品目」とはここにある1300以上の「タリフライン」のうち農業関税の削減率を例外的に小さくできる(削減しなくてもよい、ではない…筈)品目のことである。メリケンだとか農業生産物を輸出して食っている途上国は強気でタリフラインの1%と言い、EUあたりはちょいと前までは自国の農業を保護したい気持ちがやや強く8%とか言っていた。
・ で、結果出てきた数値がタリフラインの4%、品目にして53である。コメだけで17品目あるんだから、ママ受け入れれば鹿児島・沖縄のサトウキビ畑が壊滅することだってあり得る。条件付き(「等価交換」と言えばここのサイト訪問者はわかりやすいかも)で4%を6%にできるというが、それだって日本が主張してきた8%に届かない。ちなみに昨年の松岡農水相のご時世は15%を主張していたらしい。
・ 日本が主張してきた「8%」というのも、数年前からすれば大分下がった数値なのだが、これは多分、関税率200%以上の品目全て(101品目で全体の8%弱)+αを守るための数値だったんじゃないかしらん、どうかな。EUは鉱工業品の途上国の関税引き下げを求めるためにメリケン寄りに転じる。そして、8%はおろか6%も突破されここに樋上いたる。
・ 念のため200%以上のシロモノを挙げておくと、ちょいと資料が古いのでアレだが、コメは精米で341円/kg、これが778%。小麦が55円/kgで252%、粗糖が71.8円/kgで305%。別資料になるがこんにゃくいもの関税は2,796円/㎏で900%以上かかっているらしい。ちなみにこんにゃくの生産量の9割は群馬県である(群馬県と聞いてピンと来る人はいるだろーな)。
・ 更に現在食料輸出途上国が主張する「上限関税」なるものもまだ議論の途中だし、重要品目のカテゴリに入った作物についても更に関税率削減を要求される可能性がある。正に農業だけ見ていると踏んだり蹴ったりだ。
・ まだまだ先はあるが、多分日本の主張は潰されるだろう。てか、日本の農業分野における主張は潰されるだろう、と言うべきか。これから日本は鉱工業部門において攻めに転じるが、…いやぁ、多分今自民党農林畑の方々を中心に蜂の巣をつついたような大騒ぎだと思う。
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マスコミの反応は当然様々。日経新聞あたりは貿易自由化が進むのだから歓迎(てか、産業の成長を農業が足を引っ張る形になってるもんだから当然か)、読売・東京新聞あたりはあんまり紙面を割いていない、各地農業新聞はかなりぶーたれている。…が、かとゆーて鎖国しろとは多分言えないだろうから押し切られるのだろう。端的に言えば日本の外交下手を加味したとしても当然の結果なんだろーなーと。自由貿易万歳とは絶対に言いたくはないが、日本の農政を見てる限りではこの流れはいい薬かしらとしか思えないし、…とは思ったが、日本の社会構造見てるとこの結果打撃を受けるのって、マジで農業をやろうとしているごく一握りの農家の方々と、改良普及員と地方公共団体の末端農業部局の方々と、あと希望的観測でJA関係者だけかも。
・ …つーか、食料自給率とかナンとかであれだけ騒いでたくせに、こんな土壇場まで、どうして日経と農業関係新聞以外はWTOに無関心なのだろうか。いや、自分が見落としているだけかもしれないけど、いやもしかして食料自給率とWTO農業交渉は別問題として捉えるべきだとか直接支払い当然とか考えて…多分いないな。