戦争のグラフィズム/多川精一を読む。
太平洋戦争中に日本を紹介する雑誌としてFRONT言う雑誌があったのだが、これが
「国威高揚に金を度外視にかけた」と言う話は有名だが具体的に金をかけると言う
のはどう言う事か、と言う部分は今ひとつ不明だった。
読んで理解した、要するにUSSR紙と比較しても遜色無い雑誌があること自体が当時
の日本では「異常」だったのである。その為にどう言う人間が集められ、彼らがど
う働いたか、そしてそれがどう紙面に現れているかが語られている。
特に、FRONTの紙面の紹介の際にはページの意図や何をどう撮り、どう言う意図で
ページを構成したかが解説されており、門外漢の人間にも当時としては如何に画期
的なことだったことが手に取る様にわかるのである。
これだけでも資料的に素晴らしいが、一冊の本としても非常に優れている。資料本
では資料の羅列になりやすい後半部分で、空襲にさらされる東方社の生活が語られ
る。ここでは国内の混乱と状況がまとまっており、国威発揚どころではなくなって
行く日本の姿が克明に描かれて行く。
有名なFRONTとはなんだったのか、または戦中で羽振りの良かった人間の暮らしは
どうだったのか、資料を読むつもりでも小説を読むつもりでも、どちらの気分でも
良いから読んでみて欲しい本である。
追伸)
ちょいと面白いのでメモをしておく。
中でも有名なのはチハたんがずらーっと勢揃いしている写真で合成写真として有名で
ある。ところが、この合成の意味が違うのである。
都市伝説的に流れている「合成」は「少ない数の戦車を増やした」である。ところが
実際は逆らしい。ご存知の通り、望遠レンズには圧縮効果と言って遠くの景色までが
沢山圧縮されてのである。しかしそこは戦前なのでレンズが135mmしかない。
# この135mmがあること自体が凄いことなのだが。。。
そこで「一枚の絵にぎっしり詰まった戦車」を撮る為に大量の戦車を動員し、何枚か
の写真を切った貼ったしたとのことである。
これだからものごとを批判するのは難しい。